事業を営まれている方や企業でマーケティングを担当されている方の中には、「LINE公式アカウントがいいって聞いたけど、どんな使い方をすればいいの?」「LINEで何ができるの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では業種別に具体的な活用事例をご紹介していくので、LINE公式アカウントの導入を迷われている方はぜひご覧ください。
LINE公式アカウントとは
LINE公式アカウントとは、多くの人々が日常的に使っているコミュニケーションアプリ「LINE」上で友だち追加してくれたユーザーに向けて、直接情報を届けることができるサービスです。
日本国内のLINEユーザー数は月間9,600万人(2023年12月末時点)。これは日本の人口の約70%にあたる数字です。これだけのユーザー数がいるSNSやアプリはなかなかありませんから、37万を超える企業や店舗に導入されているというのも頷けます。
LINE公式アカウントでは、文章だけでなく画像や動画など、さまざまな形式のメッセージを友だち追加してくれたユーザーへ配信できます。
また、料金プランは3つありますが、使える機能に差はありません。料金プランについて詳しくはこちらの記事で解説していますが、友だちが少ないうちは無料の「コミュニケーションプラン」でも十分運用していけるでしょう。
初期費用などもかからないので、現在集客・販促業務に課題を感じているのであれば、一度導入を検討してみてもよいかもしれませんね。
LINE公式アカウント7つの活用事例
それでは、実際の企業や店舗はLINE公式アカウントをどのように活用しているのか、具体例を見ていきましょう。コロナ禍の影響によるピンチを、LINE公式アカウントの運用でチャンスに変えた事例もご紹介します。
事例その1【飲食①】SUZU CAFE
株式会社コンプリートサークルが手がけるカフェチェーン「SUZU CAFE」は、2019年11月にLINE公式アカウントを開設して以来、ショップカードを活用した既存ユーザーの集客に力を入れています。
「ショップカード」は、これまで紙などで発行していたポイントカードをLINE上で管理でき、ポイントに応じてさまざまな特典を付与できる機能です。
同カフェチェーンのショップカードは、ゴールまでのポイントを最大20ポイントに設定し、5ポイントごとに特典を用意しています。中には「グループ全員にランチデザートをサービス」といったように、複数人で利用できる特典もあるほか、来店数が減少しやすい雨の日は2ポイントを付与するなどして、リピーター育成と同時に来店客数の平準化を促進しました。
その結果、同アカウントを友だち追加した全ユーザーのうち、約半数もの人がショップカードを利用しているそうです。

(出典:LINEヤフー for Business「友だちの約半数が利用! LINE公式アカウントの「ショップカード」でリピーター育成」)
同カフェチェーンによれば、期間限定メニューなどユーザーへ確実に届けたい情報はカードタイプメッセージを使って配信しているそうで、いずれも70%前後の開封率を記録しているといいます。

(出典:LINEヤフー for Business「友だちの約半数が利用! LINE公式アカウントの「ショップカード」でリピーター育成」)
事例その2【飲食②】焼肉 シンラガーデン
埼玉県川越市で2店舗を展開するシンラガーデンは、2015年頃からLINE公式アカウントを活用しています。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が進む中、2020年5月にはLINE公式アカウントで告知したテイクアウト・デリバリーサービスのみで前年比売り上げの121%を達成したそうです。
同アカウントは友だちを増やすにあたって、いかに友だちにとってお得な情報訴求ができるかを重視しています。具体的には、ユーザーにおしぼりを渡すときなどに以下のようなA4サイズのポップを使ってLINE公式アカウントの友だち追加を促すよう、店内オペレーションに組み込みました。

(出典:LINEヤフー for Business「1カ月で5,000個の弁当を販売! LINEを使った焼肉屋のデリバリー成功の舞台裏」)
地道な案内を重ねたことにより、2020年8月末時点で30~40代の主婦層を中心に約9,700人の友だちを獲得しています。
また同社は新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響を受け、2020年4月に店内の営業自粛を決断。以降、5月末までの約2か月間以下のユーザーフローでテイクアウト・デリバリーサービスのみに切り替えて営業を行っていました。

(出典:LINEヤフー for Business「1カ月で5,000個の弁当を販売! LINEを使った焼肉屋のデリバリー成功の舞台裏」)
LINE公式アカウントのメッセージ配信ではなるべく情報量を削り、詳細はLPで確認してもらうようにしている点がポイントです。
加えて、メッセージと一緒にクーポンもつけたことも功を奏したのでしょう。冒頭でお伝えした通り、2020年5月のテイクアウト・デリバリーサービスの売り上げは前年同月比の店舗売り上げと比較して121%を記録。1カ月で約5,000個の焼き肉弁当を販売し、店舗休業による売り上げダウンをカバーすることに成功しました。
事例その3【美容・サロン】L’la citta
新潟県長岡市の美容室「L’la citta」(ララチッタ) は、予約サイトを利用せず、LINEをはじめとする各種SNSで情報発信することで、多くのユーザーに支持されています。
同店がLINE公式アカウントを開設したのは2014年11月。店舗の認知度が上がり、顧客対応中などで予約に関する電話に対応できないことが課題となっていたためです。
ユーザーをLINE公式アカウントに誘導するために、同店では各種SNSでの告知のほか、店内オペレーションでも工夫を行っています。それは、LINE経由で予約したユーザーには会計時にサイコロを振ってもらい、出た目に応じてサロン独自のポイントシステムに加算される付与ポイントを決めるというものです。
「LINEで予約した方がお得」だということをゲーム感覚で訴求するこの取り組みが受け入れられ、同店はアカウント開設から約9年で約3,800人(2023年9月時点)の友だちを獲得しました。
加えて、2021年春には友だち追加の導線を見直すため、Webサイトをリニューアルしています。以下のように、LINEで予約できることがより分かりやすくなるよう改善したところ、リニューアル前と比べて友だち追加数が月平均で約3倍になったそうです。

(出典:LINEヤフー for Business「入り口を増やして、出口を減らす。広告を利用せずに3,400人の友だちを獲得した地域密着サロンのLINE活用」)
同店のLINE公式アカウントは、キャンペーン情報の配信を代表の治田氏が行い、予約に関するLINEチャットの返信はスタッフ全員で行っています。なりたいイメージを画像で送ってもらうこともできるので、ユーザーの希望を的確に把握することができます。

(出典:LINEヤフー for Business「入り口を増やして、出口を減らす。広告を利用せずに3,400人の友だちを獲得した地域密着サロンのLINE活用」)
メッセージ配信の頻度も、以前は月に1回、決まった日付で配信していたものを、現在はそれに加えて不定期でメッセージやクーポンを配信。キャンペーンを単月ではなく複数月で実施したり、期間も変則的にしたりするなどして、店舗から送られてくる情報をユーザーが常にチェックしたくなるような企画作りを心がけているそうです。
事例その4【小売】エンド商事株式会社
大阪市内で7店舗の業務用スーパーを展開するエンド商事株式会社は、2020年にLINE公式アカウントを開設しました。
目的は、来店促進のための特売情報を幅広い年代のユーザーに届けること。積極的な店内告知やクーポン施策により、1年間で8,000人以上の友だちを集めることに成功しています。
同社はそれまで、新聞の折り込みチラシを商圏内に配布していましたが、コストの問題や情報の自由度にも限界を感じ、LINE公式アカウントの導入を検討したそうです。
発信する情報や日程は「C&Cエンド 九条店」の店長を務める天谷氏が決定し、実際の配信設定は各店舗で行うように体制を整備しました。
先行して開設していたTwitter(現:X)とInstagramでは既存商品の情報に特化し、LINE公式アカウントでは月2回配布しているチラシ情報のほか、特売商品やお買い得商品に関する情報を発信するという使い分けを行っています。
本格的に運用を始める前に友だちを増やすことに注力し、店舗内での告知やキャンペーンを展開。レジ前にQRコード付きのポスターを掲載したり、店舗の床や壁などにPOPやポスターを配置したり、直接声掛けを行うなどの方法で地道に友だちを増やしていきました。

(出典:LINEヤフー for Business「店内告知とクーポン機能で友だち数8,000人突破!折り込みチラシも削減した業務用スーパーの友だちの集め方」)
特に効果があったのは、各メーカーからの協賛商品を使ったキャンペーンです。特価商品を販売する際、友だち追加による特典としてクーポンを付与しました。

(出典:LINEヤフー for Business「店内告知とクーポン機能で友だち数8,000人突破!折り込みチラシも削減した業務用スーパーの友だちの集め方」)
こうした取り組みの結果、友だち集めを本格化させてから2カ月経過時点で増加率が急激に上昇。全ての店舗で150人以上、多い店舗では260人を超える友だちを獲得しています。
またメッセージ配信では、業務用スーパーという特性上もあり、業者の方々と一般の方々とで配信する情報と掲載先を整理し、メインでは一般ユーザー向けにメッセージを配信していたそうです。
画像を目立たせたい時にはリッチメッセージを使い、複数の目玉商品を紹介したいときにはカードメッセージを活用するあんど、使用する画像やテキストを含めて検証を繰り返してきました。その結果、同社のLINE公式アカウントは安定した運用を行うことができています。
事例その5【EC】有限会社味源
香川県まんのう町に本社を構える有限会社味源は、菓子類、麺類、健康食品など自社ブランド商品の製造・販売のほか、他社ブランドの企画・開発を主な事業としています。
同社では販売促進を目的として2020年頃から順次、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのECモールごとにLINE公式アカウントを開設。それぞれの担当者が各モールへ誘導するためのメッセージ配信などを行っています。
もともとユーザーへの情報発信にはメルマガを使っていたそうですが、開封率やクリック率、メルマガ経由での売り上げが低迷していたそうです。そこで、いまや生活インフラとなりつつあるLINEを使ったツールであるLINE公式アカウントに注目したというわけです。
Yahoo!ショッピングでは、毎週日曜日により高いポイント還元や割引セールが開催されているため、同社が運用する「自然の館Yahoo!ショッピング店」のLINE公式アカウントも週末を中心にメッセージ配信を行っています。
配信タイミングの効果検証を行った結果、前日の土曜日にセールの事前告知メッセージを配信し、当日の午前中にクーポンを配信。さらに当日の午後に駆け込み購入を狙ったリマインド配信を行ったところ、なんと売り上げが5倍以上に増加したそうです。

(出典:LINEヤフー for Business「LINE公式アカウントはメルマガの上位互換――売り上げ5倍を実現したEC企業の活用術」)
効果検証を繰り返し、現在は「土曜日に事前告知を一回、日曜日の夕方にリマインド配信を一回」行っています。あまりに頻繁なメッセージ配信はブロック率上昇にもつながりますが、このようにユーザーにとって有益な情報を、効果的なタイミングで配信するのは有効だということですね。
配信内容についても検証を重ねた結果、特にユーザーからの反応が良いのがカルーセル形式で複数の情報を配信できる「カードタイプメッセージ」を用いた配信だといいます。試行錯誤を重ねた結果、同タイプのメッセージ配信では、リッチメッセージと比較してクリック率が2倍、メッセージ経由の売り上げが3倍以上という結果を記録しました。
カードに掲載する情報は、絶対にタップしてもらいたい情報を1枚目に配置するといったように、並べる順番も工夫しているそうです。

(出典:LINEヤフー for Business「LINE公式アカウントはメルマガの上位互換――売り上げ5倍を実現したEC企業の活用術」)
こうした様々な工夫により、同アカウントではクリック率が20%以上となる配信が多数で、30%を超えることも珍しくないのだとか。また、Yahoo!ショッピングへの遷移数はメルマガの約2倍を記録しています。
事例その6【教育・習い事】株式会社K Village Tokyo
株式会社K Village Tokyoは、全国の主要都市に設けた教室(10校舎)と、オンラインによる韓国語レッスンのサービスを提供する語学教室です。
同社のWebサイトは月間100万PVを記録する人気メディアでしたが、サイト経由のコンバージョン(体験レッスンの申し込み)が伸び悩んでいたそうです。また同時に、従来電話で行っていたユーザー対応を減らし、業務を効率化したいというニーズも抱えていました。
そこで、ネイティブアプリを開発するよりも素早く導入できるLINE公式アカウントを2018年10月に開設。5名体制で運用し、韓国文化に少しでも興味のあるユーザーに向けて、さまざまな情報発信を行っています。

(出典:LINEヤフー for Business「友だち数の増加がコンバージョンに直結!ライト層の育成に寄与する語学教室のLINE公式アカウント活用」)
そして「まずは体験レッスンを受けたい」と思ったユーザーがアクションしやすくなるよう、リッチメニューに体験レッスン申し込みへのリンクを設定しています。LINE上でのコミュニケーションでライト層を育成し、コンバージョンにつなげられるような仕組みとなっています。

(出典:LINEヤフー for Business「友だち数の増加がコンバージョンに直結!ライト層の育成に寄与する語学教室のLINE公式アカウント活用」)
2021年6月時点で、同社が運用するLINE公式アカウントの友だち数は30,000人以上。主にWebページでの「友だち追加」ボタンや、体験レッスンを申し込んで来校したユーザーへの声掛けなどで友だちを増やしてきました。
また、同社のLINE公式アカウントは、教室がない地域のユーザーからも多く追加されています。こうしたデータは、今後の出店計画の判断材料にもなり得る貴重な情報です。
事例その7【不動産】株式会社縁蔵ホールディングス
株式会社縁蔵ホールディングスの「お部屋探しのハートサポート」は、初期費用0~10万円以下の物件を多く取り扱うと共に、申し込みから入居までLINE上で手続きが完結する手軽さがユーザーに支持されています。
同社は動画投稿サイトでユーザーの興味・関心を喚起するコンテンツを発信し、そこからLINE公式アカウントの友だち追加を促して検討ユーザーを獲得しています。これにより広告費を抑制し、初期費用を安く抑えて物件情報を提供することができるのです。

(出典:LINEヤフー for Business「申し込みから入居までLINEで完結! ユーザーファーストな不動産仲介」)
冒頭で触れた通り、同サービスでは引っ越しにかかる費用を抑えられるだけでなく、申し込みから入居にかかる全ての手続きをLINE上で行うことが可能です。具体的には、LINE公式アカウントのLINEチャット機能を使って、ユーザーと以下のようなやり取りを行っています。

(出典:LINEヤフー for Business「申し込みから入居までLINEで完結! ユーザーファーストな不動産仲介」)
LINEチャットで希望する部屋の条件をヒアリングしたり、各種書類のデータを送付したりできるほか、賃貸借契約における重要事項説明の「IT重説」もビデオ通話機能を使って行っているそうです。
そのため物件の内覧時を除き、ユーザーが店舗を訪れたりスタッフと対面したりすることはほぼありません。コロナ禍においては感染リスクを軽減するという副次的な効果もあったそうです。
こうした取り組みが多くのユーザーに受け入れられ、2020年1~7月までの間に、LINE経由の問い合わせから30~40件の成約につながっています。
まとめ
さまざまな業界でのLINE公式アカウント活用事例をご紹介してきましたが、ご自身のビジネスに活用できそうなヒントは見つかったでしょうか。友だちを増やすための地道な施策など、今すぐ参考にできそうな事例もありそうです。
LINE公式アカウントは無料で開設できるので、まずはアカウントを取得してみて最低限の設定を済ませ、ひとまず友だちを増やすための施策を初めてみるのもよいのではないでしょうか。
【参照・参考】
・LINE株式会社『はじめてでもできる! LINEビジネス活用公式ガイド 第2版』インプレス,2023年6月
・LINEヤフー for Business「友だちの約半数が利用! LINE公式アカウントの「ショップカード」でリピーター育成」(2024年4月19日参照)
・LINEヤフー for Business「1カ月で5,000個の弁当を販売! LINEを使った焼肉屋のデリバリー成功の舞台裏」(2024年4月19日参照)
・LINEヤフー for Business「入り口を増やして、出口を減らす。広告を利用せずに3,400人の友だちを獲得した地域密着サロンのLINE活用」(2024年4月19日参照)
・LINEヤフー for Business「店内告知とクーポン機能で友だち数8,000人突破!折り込みチラシも削減した業務用スーパーの友だちの集め方」(2024年4月19日参照)
・LINEヤフー for Business「LINE公式アカウントはメルマガの上位互換――売り上げ5倍を実現したEC企業の活用術」(2024年4月19日参照)
・LINEヤフー for Business「友だち数の増加がコンバージョンに直結!ライト層の育成に寄与する語学教室のLINE公式アカウント活用」(2024年4月19日参照)
・LINEヤフー for Business「申し込みから入居までLINEで完結! ユーザーファーストな不動産仲介」(2024年4月19日参照)